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東京高等裁判所 昭和23年(を)2373号 判決

主文

被告人小崎勇を懲役八年に被告人山本勝を懲役三年に各処する。

被告人小崎勇に対し、原審に於ける未決勾留日数中百五十日を右本刑に算入する。

訴訟費用中原審鑑定人菊地甚一に支給した分は被告人山本勝の負担とし、其の余は全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

被告人小崎勇は東京都八丈島三根村で生れ同村高等小学校卒業後父母の膝下で家業の農業及び漁業に従事して居たが十九歳の頃陸軍軍属として約一年間小笠原島に赴いて居た際所謂慰安所で女遊びを覚え、帰島後も屡々附近の慰安所等で女遊びをしたりし兎角素行の修らないもの、

被告人山本勝は右小崎方の近くの肩書居宅に往み居村の高等小学校卒業後家業である農業及び漁業を手伝つて居たが、生来精神の発育に異常があつて、智能が低く、平素被告人小崎に伴われて女遊びをしたり、島内の娘の居る家に遊びに行つたりして居たもの、

であるところ、被告人小崎は昭和二十一年三月頃足部の負傷治療のため東京都台東区車坂町の義兄高田順弘方に約二十日間滞在し、その間七、八回の多きに亘つて酌婦相手に遊興に耽り、同年四月二日帰島するや、曾て同衾したことのある石野ヨメ(明治十四年一月生)が居村川向無番地の墓地近くに独りで住み其の容貌が年令より若く見え且美人であるところから、被告人山本を誘つて同人と右ヨメを強いて姦淫しようと企て、茲に被告人両名共謀の上同月四日頃の夜前記ヨメ方に侵入し、同家三畳間で同女を仰向けに押倒し、被告人小崎は起上ろうとする同女の咽喉部を右手で押えつけ被告人山本をして同女の足部等を押えさせ乍ら其の場で姦淫し、次で被告人山本は小崎に替つて右ヨメを姦淫し更に被告人小崎は再度に亘つて同女を姦淫した後、有合せの真田紐(昭和二十三年押第一一五八号の四)を以て右ヨメの頸部を緊縛し、因つて、同女をして間もなく窒息死に致らしめたものである。

なお被告人山本勝は右犯行当時心神耗弱の状態にあつたものである。

(証拠)

一、被告人両名の当公廷に於ける各供述

一、被告人山本勝に対する予審第五回訊問調書中の供述記載

一、証人大鹿春仁の当公廷に於ける供述

一、証人内田勇、同浅沼良道、同田村義雄、同浅沼憲、同田代次子、同浅沼チヨ子、同野村正治、同浅沼コツルに対する当審受命判事の訊問調書中の各供述記載

一、原判決挙示の各証拠

(適用法令)

被告人両名の判示所為中住居侵入の点は刑法第百三十条第六十条に強姦致死の点は同法第百八十一条、第六十条に該当し、以上は手段結果の関係に在るので同法第五十四条第一項後段第十条に則り重い強姦致死罪の刑に従い所定刑中有期懲役刑を選択し、其の刑期範囲内で被告人小崎勇を懲役八年に処し、被告人山本勝については同法第三十九条第二項、第六十八条第三号に則つて減軽を施した刑期範囲内で同被告人を懲役三年に処し、なお被告人小崎勇に対しては同法第二十一条に則り原審に於ける未決勾留日数中百五十日を右本刑に算入し、訴訟費用につき旧刑事訴訟法第二百三十七条第一項、第二百三十八条に則つて主文第三項掲記の通り其の負担を定める。(昭和二六年六月二日東京高等裁判所第一〇刑事部)

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